| 昨年の秋口に話は遡る。長年の付き合いのある、ある雑誌社の編集長と二人、居酒屋
で酒を酌み交わし話をしている時のことである。 |
| 図面を見ながらこのナイフの作り方あれこれ考えていると、またあのプレッシャーと 不安感が私の中で頭をもたげて来た。ああ、なんてオレは弱い男なんだ・・・ 早速レイザー機で裁断するためのキャド製図を起こす。大体のサイズは名人より指定 されているので、その通りに寸法を図面に入れ込む。使用する鋼材はATS−34。 ブレードの厚みは5mm。刃付けはセレーション(波刃)。こればかりは手で付ける ことは面倒である。セレーション用の幅広の特殊なと石にデザイン通りの形状を入れ て行う。 さて、ここからは名人と直接打ち合わせをしなければならない。早速北海道の名人に 電話をした。 名人とは一面識もない。雑誌で見た名人は、なんと言ってもハンタープラトーンのボ スであり、独特の風格を放っていた。再度プレッシャーに襲われる。 緊張の自己紹介も終え、今回ナイフを作らせて頂くお礼を述べた。電話での話が 進むにつれ、私の胸にあった不安とプレッシャーは消え、すっかりリラックスしてい た。 名人の話しぶりは実に物腰が柔らかで、また誠実そのもの。ようやく私の中に思う存分 ナイフ作りが出来という安堵感が湧いてくるのであった。 色々聞きたいこと、やらねばならぬ事、等々。入念に打ち合わせを済ませ電話を切っ た。 一ヶ月もするとようやく名人の要求通りのナイフが完成した。早速名人に完成品を送 り、そのことを電話で伝えた。すると休日に猟に出かけるとのことであった。 休日明けに名人より電話が入った。送ったナイフで4頭のオス鹿を解体し、セレー ション刃 の使い勝手など試したが、結果は上々とのことであった。まずは一安心である。 |
| 「で、ストレート刃でもう一本無理言いたいが・・。」とのご所望。即OKの返事を
させて頂いた。 しかしやはり二度のテストでこんな素晴らしいナイフが出来たのも、名人の50年に渡る ハンティングのキャリア。確固たるナイフの使い手の知識から生まれ出たものである。 最後に名人にこのハンティングナイフを命名していただいた。 「トロフィーハンターでいいんじゃないですか」と。 澄雄 |
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